冬になると沖縄近海にはザトウクジラが集まってくる
あたたかい南の海で交尾、出産そして子育てを行うためだ
フリーダイブしていると水中でよくクジラのソングを聴くことがある
どこか切なくて儚くて本当に夢のように美しい歌声だ
水中で目を閉じてそのホエールソングに耳を傾けるととてもリラックスできる
ホエールソングを聴く度に「いつかはあのクジラたちと一緒に泳げたら・・・」と夢を膨らませてきた
「クジラと泳ぐ・・・」 夢にみたその時はやってきた
高鳴る鼓動をおさえ、フィンとマスクをつけて船から海面へと滑り込む
青い海中には悠々と泳ぐザトウクジラの親子の姿が見えた
水中にはホエールソングが響く・・・
無我夢中で水面を泳ぎ、そして潜った
水深15mほどのところまで潜っていき、クジラの横を並んで泳がせてもらう
親クジラを真ん中にして左側に自分、そして右側には子クジラがいた
ドルフィンキックで泳いでいくと子クジラが興味を持ち、
親クジラを乗り越えて自分に近づこうと頭をこちらへ振った
するとその時、親クジラはさっと胸ビレで我が子を制し、自分の方へ泳ぐことを止めさせたのだ
親 「あんたはダメよ!」
子 「え〜っなんで〜?」
そんな会話が聞こえてきそうなやり取りだった
その直後、親クジラは自分に向けてギラリと睨みをきかせてきた
その瞬間、 自分の全身にビリビリと電気が走った
「コレイジョウチカヅクナ」
頭上で雷鳴が轟いたような、ものすごい威圧感に思わずのけぞる
体を貫くレーザービームのような視線だった
そして心の中で「スマン、スマン」とお詫びをいれながらその親子から離れ、浮上した
その圧倒的な存在感、今まで味わった事のない恐怖感、
そして大いなる叡智をその奥にたたえた深いまなざしに、衝撃を覚え感動に打ち震えた
畏敬の念が溢れ出てくる
クジラと目が合ったのはほんの一瞬だったが一生記憶に刻まれることだろう
その次は子クジラの横に入った
イルカと泳ぐときに腹を見せながら近づくとよく遊んでくれることを思い出した
親愛のしるしとして野生動物がよくやるように、自分の腹を見せながら子クジラに近づいていった
すると驚いた事に子クジラもこちらへ腹を見せながら横向きに泳ぎ始めたのだ
お腹を見せ合いながら数秒の間ランデブースイム
すると今度は子クジラはきりもみ状にグルリと回転しながら泳ぎだした
「コレデキル?!」
そう言われている気がして、それをまねて自分もきりもみ状に回転しながら泳いでみた
すると子クジラの喜ぶこと喜ぶこと!
水中でテイルをブンブン振って喜びを爆発させているようだった
これぞまさにボディーランゲージ! お互いに「泳ぎの交換」をしたのだ
パフィーマンスをもってクジラとコミュニケーションがとれる、そう感じた
それはクジラとココロが通じた気がする、大きな喜びを得た一瞬だった
ザトウクジラはヒトより遥かに大きな生き物だが、
子が成長する過程で様々なことに興味を持ち、そして親が子を思う気持ちや愛情は
人間のそれとなんら変わらないことだと思った
親子クジラのやり取りはなんとも微笑ましいものだった
クジラたちはなかなか遊び好きで歌がうまく、表現力も豊かだ
巨体にもかかわらずどこか、かわいらしく思えてくるところもある
クジラにはいとおしいと思わせる「何か」があるのだ
またどこかの海でクジラと泳ぎたい
あの深い瞳が忘れられない
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