APNEA WORKS by Ryuzo SHINOMIYA
CYPRUS 2004 FREEDIVER OPEN CLASSIC
Vol.1

青く美しい地中海に浮かぶキプロス島ににやってきた。世界最大規模のフリーダイビング選手権、BIOS FREEDIVER OPEN CLASSIC IN CYPRUSに参加するためだ。3ヶ月間ハワイ島でトレーニングをしたきた成果を試す時が来たのだ。アクセルとなみちゃんがラルナカ空港まで迎えに来てくれた。異国の地に降り立ちすぐに知り合いの顔を見るとほっとする。アクセルとは初対面であったがホテルへ向かう車中でバカ話で盛り上がりすぐに打ち解けることが出来た。彼は日本人が大好きなのだ。スキンヘッドにアディダスのごついミラーサングラスをかけて右耳には携帯電話のハンズフリーイヤホンを装着、サイバーな雰囲気を醸し出すテクニカルダイバー。彼は今回の大会の運営を取り仕切っているのだ。
ホテルに着くとハワイで一緒にトレーニングしたウォルターと再会。そしてスウェーデンの超美人ダイバー、ロッタや世界記録保持者マーティンなど続々と選手たちが集まり始めてきた。運悪くマーティンは荷物をロストしてしまいハンドキャリーしたモノフィンだけを持って登場。着替えはおろかウエット、マスク、ウエイトもなし。つくづくツイテない男だ。しかしフリーダイバーたちは心根のいいヤツばかり。「俺はマスク2つ持っているよ」「じゃあ私はスノーケルを貸すわ」と借り物競争が始まり見事に器材がそろってしまったのである。「スポンサード バイ インターナショナルフリーダイビングコミュニティー!!!」大喜びのマーティンであった。
コンスタントのトレーニングが始まる。自分にとっては地中海で潜るのは初めてのことだ。ハワイ島のコナブルーとはまた違った美しいグランブルー。フリーダイビングが生まれたこの海で思いっきり潜ってみたい!と気持ちが逸る。アクセルのゾディアックボートに乗り込み競技が行われる予定の沖合いを目指す。水深120mのポイントだ。ゾディアックから静かに海へ入る。BLUEしかない世界が広がる。フリーダイビングというスポーツがなぜこの海で生まれたのかが一瞬で理解できた。それは海の深いところまで潜ってみたくなるような美しい青がこの海にあるからだ。太陽の光がどこまでもその青のなかへと吸い込まれていく、音もなくゆらゆらと。エンゾやジャックまた彼らを目指したウンベルトたちが育った海。そう思うと感慨深いものがある。
一日目は様子をみながら73m、二日目は81m。そして3日目に自己ベスト84mをマークした。そして四日目、自分でも信じられない深さに到達した。深度は88m、自己ベスト更新だった。上ってきてからも80m前後の苦しさと変わりなく、それほど記録が伸びたとは思えなかった。が、D3を見て自分自身驚いた。88m/2’29”と表示されていた。近くで潜っていたマーティンやハーバート、ウォルターも大喜びで祝福してくれた。ハーバートは遅れて現地入りし、まだ本調子ではない。そんなコンディションではあるが「今日はRYUZOに負けたよ」と冗談ながらも言ってくれてなんだか素直に嬉しかった。この時点でのコンスタント世界記録はハーバートの95m。「あと7mのところに世界記録がぶら下がっているんだなあ」と、浸ってしまった。
海から上ってホテルの窓からもう一度青い地中海に目を向けた。キプロスは午後になると決まって白波が立つ。しかしこの日の海はなんだかいつもと違う海に見えた。海の底で感じたあの濃密な静けさを思い出す。グランブルーに囲まれるあの至福のひと時・・・。地中海の一滴の水になれた気がした。
Vol.2